虹彩認証とは?仕組みや特徴、活用シーンを解説

昨今は工場の入退室やオフィスの勤怠管理など、さまざまな場面で生体認証システムが利用されています。
しかし、認証システムによっては「マスクを着用していると顔認証をスムーズに利用できない」「指紋認証は指の接触で衛生面が気になる」といった課題があるでしょう。
本記事では、生体認証の一つである「虹彩認証」について、仕組みや特徴を詳しく解説します。海外の事例を交えた活用シーンも紹介しますので、参考にしてください。
1.虹彩認証とは
虹彩認証は生体認証技術の一つで、眼の「虹彩」を用いて認証を行います。
偽造・なりすましの防止に有効な生体検知システムを内蔵しており、顔や指紋による生体認証と比較して誤認証率が低い点が特徴です。
認証の仕組みについては、あとの章で詳しく解説します。
1-1.そもそも虹彩とは

虹彩は、水晶体の前にある薄い円盤状の膜を指します。
眼に入る光の量を調節する領域で、暗所では瞳孔の拡大によって多くの光が眼に入り、明所では瞳孔の収縮により光量が少なくなるメカニズムです。
虹彩の模様は左右の眼で異なるほか、万人不同で、一卵性双生児も異なります。
身体の一部でありながら、遺伝の影響がほとんどない点が特徴です。模様は後天的に発生し、2歳以降は生涯不変といわれています。
1-2.虹彩認証の仕組み
虹彩認証は、虹彩を近赤外線カメラで撮影し、本人認証を行う方式です。
読み取った虹彩画像から固有の虹彩コードを生成し、データベースに保存された虹彩コードとの照合によって本人または他人の判定を行います。
前提として虹彩認証を含む生体認証は、一致判定ではなく、類似度スコアによる確率判定で本人認証を行います。
認証の誤りを定量的に表す指標とされるのが「FAR(他人受入率)」と「FRR(本人拒否率)」です。
FARは、未登録の第三者を、登録済みのユーザーであると誤認して受け入れる確率のことです。
FRRは、登録済みの本人を、本人ではないと誤認して拒否する確率をいいます。
生体認証において、FARとFRRはどちらも低いほど望ましいとされています。
虹彩認証は主にFARを指標としており、相違度(ハミング距離)によってFARとFRRのバランスをチューニングする仕組みです。
相違度は、認証プロセスにおいて虹彩コード同士を照会する際に算出するものです。
相違度に一定の閾値を設けることで、認証または否認を判定します。虹彩認証では、相違度をどこに設定するかで、認証精度を調整します。
1-3.虹彩認証と他の生体認証の違い
生体認証には、虹彩認証のほかに、代表的なものとして顔認証・指紋認証・静脈認証・掌形認証があります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
| 認証方式 | 認証に用いる特徴 | 特徴量 | タッチ(接触)の有無 | 耐偽造性 | 経年変化 | 環境変化の影響 | 操作性 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 虹彩認証 | 虹彩模様 | ◎ (10の78乗) | なし | ◎ (高い) | ◎ (しにくい) | ◎ (受けにくい) | ◎ (高い) |
| 顔認証 | 顔の輪郭・パーツの 配置など | △ | なし | △ | △ | △ | ◎ |
| 指紋認証 | マニューシャ | 〇 (10の12乗) | あり | △ | △ | △ | △ |
| 静脈認証 | 静脈の血管パターン | 〇 | あり | 〇 | △ | △ | 〇 |
| 掌形認証 | 手のひらの形状など | △ | なし | △ | △ | △ | △ |
虹彩認証はほかの認証方式と比較して特徴量が多く、偽造・経年変化しにくい、環境変化の影響を受けにくいといえます。
また、タッチレスで認証できる点も特徴です。
虹彩認証は長期的な利用を想定したケースや、衛生面などからタッチレスで認証を行いたいシーンに適した方式といえるでしょう。
2.虹彩認証システムの特徴
虹彩認証はほかの生体認証技術とどのような点が異なるか、さらに詳しく見ていきましょう。
本章では、虹彩認証システムの主な特徴を3つ紹介します。
2-1.特徴1.生体認証の要件を全て満たしている
生体認証には、一般的に以下の要件があります。
| 生体認証要件 | 虹彩認証の優位性 |
|---|---|
| 唯一性 | ・地球上の人間が全員異なる ・一卵性双生児も異なる |
| 永続性 | 生涯不変(2歳以降生涯不変) |
| 普遍性 | 虹彩は全ての人間が保有し共通の性質を持つ |
| 高度性 | 他人受入率:片眼1/120万、両眼同時1/1兆 |
| データ取得の容易性 | 体内の複雑なパターンをカメラで直接撮影可能 |
| 安全性 | ・なりすまし不可能・所持忘れ・紛失なし、貸借不能、パスワード不要 |
| 安定性 | 環境変化(温湿度)・年齢・職業・健康状態の影響を受けにくい。 |
| 使いやすさ | ・カメラを見るだけで認証できるハンズフリー方式。カメラが身長(眼)に合わせてオートチルト(自動追尾) ・AIやTOF(距離画像センサー)を採用し、適正距離(30~45cm)に入れば1秒以内で高速認証 ・眼鏡・ゴーグル・マスクを着用していても、化粧を変えても高速で認証 |
| 衛生・SDGs | ・非接触、設定温度以上で警告・解錠しない・プラスチック・カードの削減 |
数ある生体認証システムのなかで、上記すべての要件を満たすのは虹彩認証のみです。
2-2.特徴2.非接触かつ目が露出していれば使用できる
虹彩認証システムは、機器に触れずに認証ができます。指紋認証のように、指先を読み取り部分に押し付けたり、接触させながらスライドさせたりする必要がないため衛生的です。
また、虹彩認証は眼が露出していれば認証できるため、医療現場や食品工場といった作業着で覆われる場面でも広く活用されています。
顔認証の場合、マスクや防塵ゴーグルといった装着物による認識率の低下が懸念されるでしょう。
2-3.特徴3.他の生体認証に比べ、誤認証率が低い

虹彩認証は、ほかの生体認証に比べて誤認証率(FAR)が低い点も特徴です。
たとえば、一般的な音声認証の誤認証率は500分の1、顔認証は1,000分の1とされています。
指紋認証の場合、指紋にはデータベースに保存された指紋と読み取ったデータとで共通する特徴点が40あるとされており、誤認証率は10,000分の1です。
一方、虹彩には256の特徴点があります。
虹彩認証システムの「イリアス」を使用した場合、誤認証率は片眼認証で100万分の1以下、両眼認証で1兆分の1以下です。
このように、虹彩認証システムは、ほかの生体認証システムに比べて高精度といえるでしょう。
3.虹彩認証の活用シーン
虹彩認証の日本国内における普及率はほかの生体認証に比べて低めですが、海外では多くの場面で活用されています。
海外の事例を交えながら、虹彩認証の代表的な3つの活用シーンを見ていきましょう。
3-1.入退室管理
虹彩認証は、入室制限がある環境下での入退室管理に活用されています。システムに登録したユーザーの虹彩を認証したときのみ、扉が解錠する仕組みです。
認証に鍵やICカードを使用しないため、鍵の盗難・複製による侵入リスクを回避できます。また、ICカードの紛失などがもたらす第三者のなりすまし防止にも有効です。
具体的な活用シーンは、作業着や手袋・マスクなどを装着して入退室をする工場や医療現場です。
また、機密情報の漏えい防止やセキュリティの差別化を図り、オフィス・マンションで導入する事例も見られます。
3-2.本人認証管理
虹彩認証は、入退室以外の本人認証管理にも活用されています。なりすましを防げるセキュリティ性だけでなく、タッチレスや認証スピードの速さといった利便性にも長けているためです。
たとえば、虹彩認証システム「イリアス」の場合、虹彩データの取り込みから最短0.5秒で照合が完了します。
インド国内では「Aadhaar(アドハー/アーダール)」と呼ばれる生体認証IDに、虹彩や指紋による認証システムを採用しています。
本人認証はもちろんのこと、福祉受給の有資格者に対する給付も可能なため、不正受給などの犯罪防止に効果的です。
そのほか、UAE(アラブ首長国連邦)では、国境審査・入国審査に虹彩認証システムを導入しています。
シンガポールにおいても、IC旅券(パスポート)に虹彩画像を登録し、出入国管理に利用する例が見られます。
3-3.決済システムでの活用
虹彩認証システムは、決済システムでの活用も可能です。
たとえば、先述したインドのAadhaarではキャッシュレス決済もでき、盗難などの犯罪防止に役立っています。
また、中国では2018年に、鉄道などの交通インフラへ虹彩認証を導入しました。中国は春節の時期に交通機関が大混雑することが問題視されていましたが、導入後は認証のスピードや効率性から状況が改善したとされています。
現在は銀行ATMも虹彩認証による利用が可能で、現金やカードを必要としない社会の実現に寄与しています。
4.虹彩認証が日本で普及しにくい理由
海外では虹彩認証を導入するケースが増加傾向にありますが、日本国内では普及していないのが現状です。
虹彩認証が日本で普及しにくい理由として、以下の点が挙げられます。
- 国内で虹彩認証技術の研究開発を進める企業が少ない
- 国内の活用事例が少なくシステム導入の効果検証が難しい
現在のところ、日本国内で虹彩認証技術を扱う企業は多くありません。
理由の一つとして挙げられるのが、虹彩を撮影する機器や制御アプリの開発に、多額のコストがかかる点です。開発後の国内における導入見込みなども不透明なため、研究開発を躊躇・断念してしまった企業もあると考えられます。
研究開発を進める企業が少ない日本国内では、導入を検討中の企業も虹彩認証システムの基本知識や導入事例を把握するのが困難です。
海外企業のシステムを導入する選択肢もありますが、高価格なうえに、言語や導入後のサポートといった問題が懸念されます。
海外における導入効果は確認できても、国内の事例が少ないことから、導入に踏み切れない企業もなかにはあるでしょう。
虹彩認証システムについてはクリテックジャパンにご相談ください
虹彩で認証を行う虹彩認証は、顔や指紋といったほかの生体認証に比べて誤認証率が低いとされています。
虹彩は万人不同かつ2歳以降は生涯不変であるほか、認証環境の影響を受けにくいことなどが主な理由です。
虹彩認証システムは、海外のさまざまな国で入退室管理・本人認証管理・決済システムなどに活用されています。
しかし日本では、研究開発を行う国内企業や活用事例が少ないことから、普及していないのが現状です。
クリテックジャパンは、虹彩認証の普及を目的に設立し、虹彩認証に関する研究開発を約20年間行っている日本企業です。国内においても、虹彩認証システムの「イリアス」を工場や研究室に導入した実績があります。
虹彩認証システムの導入を検討中の方は、クリテックジャパンへご相談ください。
